トルコショックとは?トルコリラ急落の原因やそこから得られた教訓をMR.Tがわかりやすく解説

当記事では、2018年8月に起こった「トルコショック」について解説し、トルコショックが起こった原因や、なぜトルコリラが歴史的大暴落を起こしたのかまでを紹介します。

当記事を最後まで読めば、トルコショックの全てを理解でき、かつ今回の教訓を基に今後の対策なども出来るようになります。

2018年8月:トルコショックによって為替市場は大混乱となる

2018年8月、
外国為替市場ではトルコ共和国の通貨である
「トルコリラ」が空前絶後の大暴落となりました。

トルコリラ/米ドル相場は8月10日に前日比約14%安となり、
一気に1トルコリラ=0.15ドルまで急落、

そして13日には一時0.13ドル台の安値を記録しましたが、
これがトルコリラ/米ドル史上最安値となりました。

なんとトルコリラは3日で約26%の下落となったのですが、
この大暴落を
「トルコショック」と呼んでいます。

なお、
このトルコショックは他の新興国通貨をも揺るがし、
日米をはじめとする世界の株式市場までにも影響を及ぼしました。

さて、
ではこの「トルコショック」とは、
一体どのようにして起こったのでしょうか?

それについてを以下よりわかりやすく解説していきます。

トルコリラ急落の原因となった「トルコショック」とは?

トルコショックとは、
2018年8月にトルコリラが急落して起こった通貨危機の事を言い、
「トルコ通貨危機(Turkish Currency Crisis)」
とも呼ばれてます。

そして、
このトルコショックが起こるきっかけとなった一番の要因は、
主にトルコとアメリカの間における政治的・外交的な関係の悪化でした。

では、
トルコショックが引き起こった背景を順番に説明していきます。

  1. トルコでアメリカ人牧師が拘束
  2. トランプ大統領がトルコに対する制裁を警告
  3. トランプ大統領が制裁として関税引き上げを表明

2016年10月:トルコでアメリカ人牧師が拘束される

2016年7月、
トルコでは同国のエルドアン大統領の暗殺を企てた
クーデター未遂事件が起こりましたが、
その後の同年10月、
アメリカ人牧師であるアンドリュー・ブランソン氏が
そのクーデター未遂事件に関与したとして、
トルコ当局に拘束されてしまいました。

このアメリカ人牧師の拘束は長期間に渡りましたが、
アメリカ側はトルコ側に牧師を釈放するようずっと要求していたのです。

しかし、
トルコ側はその要求に応答せず、
「ブランソン氏がクーデターに関わる容疑者である」
という理由から長期間の拘束を止めませんでした。
(※2018年10月にブランソン氏は無事釈放され、アメリカに帰国する)

2018年7月26日:トランプ大統領がトルコへ大規模な制裁を下すと警告

このトルコによるブランソン氏の長期拘束に対して、
アメリカの大統領であるトランプ氏は猛烈な批判を投げつけましたが、
これがトルコとアメリカとの大きな外交問題に発展します。

そして怒りに怒ったトランプ氏はついにその痺れを切らし、
2018年7月26日に
「ブランソン牧師を開放しなければトルコに対して大規模な経済制裁を科す」
とツイッターにて警告しました。

また、
これに先立ってアメリカのペンス副大統領も
トランプ大統領と同様の意見を公表し、
「ブランソン氏を解放しなければ厳しい制裁を科す」
と主張したのです。

2018年8月10日:トランプ大統領が関税引上げを表明しトルコリラ急落

そして2018年8月10日、
ブランソン牧師の拘束を開放しないトルコに対して、
トランプ大統領はトルコから輸入する鉄鋼や
アルミニウムに対する関税を2倍に引き上げる事を発表しました。

このトランプ大統領による経済制裁の打ち出しによって、
市場では一斉にトルコリラが売られ、
トルコリラの暴落に止めを刺す形となったのです。

8月10日のトルコリラ/米ドルは一日で約14%下落し、
8月13日には市場最安値をマークしました。

 

関税の引き上げによってトルコの鉄鋼メーカーの株価も急落

今回の制裁によって、
トルコからアメリカへ輸出する際の関税が引き上げられ、
鉄鋼製品は25%から50%ヘ、
そしてアルミニウム製品も10%から20%となりました。

関税をたくさんかけられると、
トルコがアメリカへ輸出する際に
余分な税金がたくさん徴収される事となるので、
アメリカへの輸出が抑制されトルコ経済の縮小に繋がります。

なお、
2017年におけるトルコの輸入・輸出に関するデータを確認すると、
いずれもアメリカが全体の5.3%を占めている事が分かります。

参考:OEC

なので、
関税引き上げによってトルコから
アメリカへ輸出する製品の売れ行き低迷が予想された為、
トルコ国内の鉄鋼メーカーの株価が軒並み急落し、
今回のトルコショックへと繋がったのです。

新興国通貨にも影響が広がったトルコショック

今回のトルコショックに伴い、
アルゼンチンペソや南アフリカランドといった
他の新興国通貨にも下落が波及しました。
(※以下のチャートは全て対米ドル)

特にアルゼンチンペソは
8月9日〜13日にかけてで約8%の下落となり(対ドル相場)、
13日にはアルゼンチンが通貨防衛の為の緊急5%の利上げを行うも、
その下落は止まりませんでした。

また、
下落の止まらないアルゼンチンペソへの懸念により、
8月30日には15%の追加利上げが実施されたものの、
その効果はほぼありませんでした。

アルゼンチンペソは結果的に
トルコリラよりも大きな通貨安となりましたが、
トルコショックの発生から2018年9月28日までにかけて
約32%の下落となったのです。

このように、
トルコリラの下落が他の新興国通貨へ下落を招いてしまい、
トルコショックによる「新興国通貨のドミノ倒し」
が波及してしまったのです。

トルコショックによる米ドル/日本円相場への影響は小幅に留まる

このように、
トルコショックを受けて為替市場が大きく乱高下する一方で、
その影響をあまり受けなかったのはドル円相場でした。

そもそも日本円は「有事の円買い」と言われるように、
市場がリスクオフ(リスク回避)の動きとなった際に
円が買われて円高となる傾向があります。

しかし、
今回のトルコショックでは
リスクオフによる円買いは限定的であったようにも見え、
その下落幅は8月10日〜13日にかけて最大約1%に留まりました。

なお、
今回のトルコショックでリスクオフの為に
多く買われた通貨は日本円ではなく、
基軸通貨である米ドルだったという専門家の見方もあり、
結果的にドル円相場に大きな影響は及ぼされませんでした。

なので、
今回のトルコショックは急な円高を施すような
危険材料でもなかったのかもしれません。

トルコショック後のトルコリラの動きやチャートの推移

トルコショックによって暴落したトルコリラは
その後大きく回復し、
2018年10月中旬にはトルコショック前の水準まで戻しました。

では、その背景について以下より解説していきます。

2018年8月16日:トルコ中銀がステルス利上げを行いトルコリラ20%回復

2018年8月16日、
トルコ中央銀行は政策金利を引き上げせず、
政策金利よりも高い金利で貸出を行う「ステルス利上げ」を実施しました。

“トルコ中央銀行は密かに利上げをしている。これが奏功し、通貨リラはここ3日で約20%上昇した。 

中銀は利上げを発表してはいないが、
1週間物レポによる資金供給を13日以来、実施していない。
このため銀行はより高い翌日物金利での借り入れを余儀なくされ、
平均資金調達コストは15日、ベンチマークを17ベーシスポイント(bp)上回った。”

引用:Bloomberg

これにより、
トルコ中銀は現行17.75%であった1週間物レポ金利(政策金利)を適用せず、
翌日物貸出金利と同じレートとなる19.25%の金利で貸し出していました。

そしてそれが実質的な「利上げ」となり、
トルコリラ相場は3日で20%回復しました。

2018年9月13日:トルコ中銀は政策金利を6.25%引上げし24%とする

トルコ中銀のステルス利上げが発動したものの、
トルコリラ相場の乱高下は続きました。

そこでエルドアン大統領は
「インフレが進んだのは中央銀行の誤った措置の結果だ」
という見解を示し、利上げを反対する姿勢を見せていました。

ですが、
2018年9月13日にトルコ中銀は政策金利の引き上げを決定し、
政策金利である1週間物レポ金利を17.75%から24.0%まで引き上げたのです。

これによってトルコリラは一時5%以上の上昇となり、
その後は右肩上がりに回復してい
きました。

トルコショックでビットコインの取引高が急増し価格が逆相関となる

そして、
このトルコショックによって相場が大きく上昇したのがビットコインでした。

トルコショックが起こった8月10日、
大きく下落するトルコリラに対して
「ビットコイン/トルコリラ」の相場は大きく上昇し、
5日で最大約45%の高騰となりました。

このように、
トルコでは自国通貨のトルコリラと
仮想通貨ビットコインとの値動きが逆相関していたのです。

ビットコインと言えば、
発行主体が無く中央銀行が介在しない「
非中央集権型」の通貨ですが
、今回のトルコショックによって自国通貨から代替通貨へと資産を避難させる動きが見られました。

日本だとこういったケースは中々考えにくいですが、
自国通貨の信用が低い国ならではの現象です。

なお、
このようなケースはトルコのみならず、
ハイパーインフレを起こしたジンバブエや
金融危機によって預金封鎖を受けたキプロスでも起こっています。

今回のトルコショックから得られた今後の為の教訓

では、
今回のトルコショックから得られた教訓をいくつか紹介していきます。

トルコリラの暴落は突然やって来たわけではなかったこと

今回のトルコリラの暴落は
「トルコショック」という形で急に下落したものの、
以前からそのリスクは高まっていました。

そもそもトルコではエルドアン大統領による
「独裁政権」が展開されており、
反政権デモやクーデター未遂事件などもあった為、
トルコの政情はかなり不安定でした。

こう見れば、
トルコリラの暴落は突然始まったような事では無かった事が分かりますね。

そして、
トルコではドル建ての対外債務が多い為に、
自国通貨の価値が下がればドル建てで調達していた債務の返済額も増える事となってしまいます。

例えば、
トルコリラは1年でおよそ50%の下落となりましたが、
その場合にドル建てで調達していた債務の返済負担も50%増えてしまうのです。
(米ドルの通貨価値が上がりトルコリラの通貨価値が下がってしまうため)

つまり、
そういったケースに陥ると国の財政状況は金銭的にもますます悪化していくので、
「売りが売りを呼ぶ」
といったデッドスパイラルにハマってしまいやすいというわけです。

なので、
その国の通貨へ投資をする際は、
予め対象国の政治・経済・社会環境の変化を捉えておかねばなりません。

高いスワップ金利は新興国通貨の「リスク・プレミアム」に過ぎないということ

トルコリラと言えば「高金利通貨」であり、
高いスワップ金利が魅力的で多くの投資家を惹きつけていました。

しかし、
高いスワップ金利は「将来の価格の下落リスク」とのトレードオフであり
、不安定な通貨に対する「リスク・プレミアム」に過ぎないのです。

リスク・プレミアムとは?

リスクプレミアムとは、
標準よりも高いリスクに対して支払われる対価の事であり、
リスクの高い商品ほどその期待リターンは上がります。

例えば、
日本円の金利がなぜ安いのかというと、
それは単純で「流動性が高くて安全な資産だから」です。

なので、
安全な資産ほどそのリターン(金利)は低くなり、
反対に危険度の高い資産ほどそのリターンは高くなるのです。

高金利でも通貨の価値が弱まれば元本割れする事も起こり得る

トルコでは相次ぐ政情不安が抱えられていた事から、
トルコリラのリスクプレミアムは日々高まり、
当時15%を超えるような高金利が付けられてました。
(※但し現在は政策金利24.0%)

しかし、
このトルコリラの魅力的な金利は
不安定な通貨に対するリスク・プレミアムでしかないので、
結果的にトルコリラが1年間で50%を超えるような下落となってしまった事はもう言うまでもありません。

このようなトルコリラの
「表面的な利回り」を見て投資し、
結果的に通貨安になって元本割れとなってしまった投資家も多かったのでは無いでしょうか。

やはり、
トルコリラへの投資は誰でも儲かるような
「甘い蜜」ではなかったのです。

現在トルコリラの価格は回復傾向にありますが、
今後どうなるのかはやはり分かりませんし、
再び大暴落が来てもおかしくはありません。

このように、
高金利というのは一見魅力的に見えますが、
そこには大きなリスクが潜んでいる事を忘れてはなりません。

トルコショックのまとめ

今回のトルコショックをまとめると以下です。

  1. トルコでアメリカ人牧師が拘束される。
  2. トランプ大統領はトルコに対して経済制裁として関税の引き上げを打ち出し、トルコリラは大暴落を起こす。
  3. その後トルコ中銀は大幅な利上げを実施し、トルコリラは2018年9月以降順調に回復する。

今回のトルコショックによる暴落は
様々な要因が複雑に絡み合って発生しましたが、
以前からトルコリラはハイリスク・ハイリターンであった事には変わりはありません。

特にトルコは国のGDPの半分を超えるドル建て債務を抱えている為に、
自国通貨の下落による経済へのダメージが相対的に大きくなってしまいます。

なので、
それらを踏まえて引き続きエルドアン政権の動きや、
それに伴うトルコリラの値動きにも注視しておく必要があるでしょう。

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