12月11日、
遂にサウジアラビアの国営石油会社である
「サウジアラムコ」がサウジの証券取引所で
新規上場(IPO)しましたね。
サウジアラムコの上場に関する話は今に始まったわけではなく、
数年前から世界の株式市場を揺るがす
ビッグニュースとしてメディアを騒がせてました。
まさに「世紀のIPO」といっても過言ではないくらいの
一大イベントとなったサウジアラムコの新規上場ですが、
国内のサウジ証券取引所(タダウル)に上場後、
公開価格である32リヤルを上回る
35.2リヤル(9.3ドル)で初値を迎え、
そのままストップ高となりました。
公開初日は10%超のストップ高で時価総額も約200兆円に達し、
一瞬にして世界最大の企業が誕生したのです。
ですが一方で、
サウジアラムコに関する様々な疑問の声も多くあります。
というのも、
今後のサウジアラムコの行方次第では、
世界を大きく揺るがすことにもなりかねません。
日経平均株価や原油価格はおろか、
世界経済が思わぬ方向に
傾いてしまう可能性だってありますからね。
なんせサウジアラムコは
時価総額が2兆ドルに達するような巨大企業なので、
当然ながらそれなりのリスクを抱えることとなるでしょう。
そこで、
今回はアラムコの新規上場に関する情報や
今後の経済リスク、為替相場への影響について、
どこよりも分かりやすく体系的にまとめています。
是非最後までお付き合いください。
コンテンツ
史上最大のIPOに成功したサウジアラムコ
そもそもサウジアラムコとは?
そもそもサウジアラムコとは、
サウジアラビアが持っている石油会社で、
1933年に設立されました。
出典:saudiaramco
「アラムコ」という名前の由来は
「アラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー」
という元々の名称から来ており、
同社の保有する原油埋蔵量や原油生産量、
原油輸出量は共に世界最大規模を誇っています。
なお、サウジアラムコは元々国営企業ではなかったものの、
1973年にサウジ政府が25%の株式を買い取りました。
その後、
政府は段階的にアラムコの資産を買い取って
正式に国有化を完了させますが、
現在は98%の株式が
サウジアラビア政府によって保有されているので、
自社の経営がサウジ政府の主導で行われています。
IPO・時価総額・純利益で史上最大規模に
2019年11月17日に
IPOの公募受付をスタートしたサウジアラムコですが、
同年12月11日に全株式の内の1.5%が
サウジアラビア国内のサウジ証券取引所に上場しました。
買い手の内訳は3分の1はサウジ国内の個人投資家、
そして3分の2が機関投資家となっていましたが、
初値は10%高のストップ高となる35.2リヤルまで上昇し、
上場2日目も序盤に約8%高の38.7リヤルをつけ、
一時企業価値が2兆ドル(約217兆円)を超えました。
なお、12月18日現在は一旦値動きが落ち着き
36リヤル台後半のレンジで推移していますが、
アラムコは上場して約1週間が過ぎた今も、
依然時価総額2兆ドルに近い水準をキープし続けています。
※アラムコの時価総額
= 36リヤル(1リヤル=約0.27ドル)×2,000億株(発行済株式数)
このように、
調達額は256億ドル、
そして時価総額は約2兆ドル(約200兆円)超えと、
“世界最大のIPO”を経て
“世界最大の時価総額”を持って株式市場に君臨したのです。
これに伴い、
サウジアラムコは以下3つの
「史上最大額」の記録を保持する上場企業と化しました。
- IPOによる資金調達額
- 時価総額
- 純利益
IPOによる資金調達額は中国アリババを抜いて史上最大
IPOで256億ドルを調達したサウジアラムコですが、
なんとその調達額は、
2014年にニューヨークに上場した
中国のEC大手アリババを上回りました。
出典:Bloomberg
これを日本円に換算すると
約2.7兆円を超える規模となりますが、
2018年に東証へ上場したソフトバンク(SB)や、
2010年に200億円を調達して上場した香港の保険大手AIA
などを悠々追い抜く結果となっています。
時価総額もAppleを超えて世界1位となる
サウジアラムコの初値(12/11時点)に
発行済み株式数である約2,000億株をかけ合わせると、
時価総額は約1兆8,700億ドル(約200兆円)に及ぶ規模となり、
アメリカのAppleやマイクロソフトをすっ飛ばして
いきなり世界最大の時価総額を持つ会社となりました。
それまで一位だったAppleの時価総額は
現時点でおよそ120兆円ですが、
それだけでもアラムコが
いかに大規模であるかが分かるかと思います。
出典:Yahoo!ファイナンス
ちなみに日本で言うと、
時価総額1位のトヨタで約25兆円程度なので、
サウジアラムコは
トヨタ自動車のおよそ8倍の時価総額を持つ企業となったのです。
稼ぎ出す純利益の額も世界最大級のサウジアラムコ
そして、
サウジアラムコは純利益も世界最大規模です。
2018年のサウジアラムコは
1日あたり1,030万バレルの原油を生産し、
2018年に3,559億ドルの売上、
そして純利益は1,111億ドル(約12兆円)と、
Appleの2倍に相当する利益をたっぷり稼いでいることが判明しました。
純利益(2018年) | |
サウジアラムコ | 1,111億ドル |
Apple | 595.3億ドル |
マイクロソフト | 392億ドル |
Amazon | 100.7億ドル |
アメリカのGAFAを
敵ともしないほどの時価総額や純利益ですから、
上場後にサウジアラムコが今後世界経済を
動かす可能性は大いにあると考えられるでしょう。
サウジアラムコはなぜ新規上場を目指したのか
「脱石油」を目指したサウジアラビア
なぜ今回サウジアラムコがIPOをしたのかというと、
それはサウジアラビアが石油への依存から脱却する為でした。
サウジアラビアと言えば
石油の輸出で成り立っている国です。
【世界の石油輸出額 国別ランキング】
出典:Global Note
2018年の国別の石油輸出額ランキングを見ると、
サウジは世界no.1の石油輸出大国であることが分かりますね。
そんな石油大国のサウジですが、
同国のムハンマド皇太子は、
「いつまでも石油に依存するのは危険だ」と主張し、
脱石油を目指そうと考えました。
なぜなら、
石油の価格は変動が激しい為に、
石油の価格次第で国の売上も大きく下落するリスクがあるからです。
石油をサウジアラビアに依存する必要がなくなってきた
アメリカでは「シェール革命」が起こり、
今まで困難だった石油やガスを
自由に採掘できるようになりましたが、
その影響で今やアメリカは世界最大の石油産出国となり、
石油の産出量でサウジアラビアを追い抜きました。
出典:Global Note
アメリカが石油の輸入国だった時は
中東地域から石油を輸入する必要がありましたが、
今やアメリカは石油の輸出国。
つまりアメリカ側からすれば、
石油を中東やサウジアラビアに依存する必要性が
薄れてきているのです。
だからこそ、
サウジアラビアは石油やアメリカへの依存体質から
脱却する必要がありました。
当然いつまでも石油が取れ続けるわけではありませんし、
石油に代わる燃料だって出てきています。
長期スパンで見れば、
石油に頼りっぱなしだと国の存続危機にも
なりえるということで、
サウジ政府はサウジアラムコをIPOして資金調達し、
新しく何かを始めたいと考えたわけです。
原油安に見舞われていたサウジアラビアですが、
サウジアラムコの上場によって、
巨額の資金を確保できる他、
その資金を元手にした事業投資にも期待が一層高まっています。
サウジアラムコの上場は「サウジビジョン2030」を実現する為に行われた?
出典:Vision2030
元々サウジアラビアは、
2030年までに同国で経済改革を行うことを計画した
「サウジビジョン 2030」を掲げて進めてきていましたが、
このサウジビジョン2030を実現させることこそが、
今回アラムコが上場することとなった大きな動機です。
「サウジビジョン2030」とは?
サウジビジョン2030とは、
「活気ある社会」「盛況な経済」「野心的な国家」
の3つの柱のもと、
サウジの世界貿易における地位向上や観光収入の増加を通し、
「脱石油」でサウジアラビア経済を多様化させる為の計画のことです。
例えば近年のサウジアラビアでは、
スポーツ観戦やマンガのようなエンタメ分野がどんどんと発展していますが、
それはまさにビジョン2030を実現させる為なんですよね。
サウジビジョン2030を達成する為にはお金がかかる
脱石油を目指すサウジアラビアにとって、
このサウジビジョン2030の成功は超重要となりますが、
当然それを達成する為には、
莫大なお金がかかります。
なのでサウジ政府は、
このサウジビジョン2030を何が何でも成功させるべく、
今回サウジアラムコが大々的に上場して
資金調達したというわけなんですよね。
なお、
ビジョン2030では、
2030年を期限とするロードマップが公式サイトより公表されています。
出典:Vision2030
公式サイトでは2030年までの期間を3つに分類し、
それぞれの期間ごとに「3つの目標を達成しよう」
といった旨が記載されていたのですが、
上記のロードマップを日本語に訳すと以下の通りです。
2016年 | 2020年 | 2025〜2030年 |
基盤を整える ・主要な改革をスタートして国民に影響を与えられるようなプログラムを開発する | 成果を出す ・改革を継続する為の勢いを維持する | 影響力を深める ・2030年以降の戦略を判断する |
このように、
サウジアラビアは2030年に
「ビジョン2030」を実現させようとしていますが、
2016年〜2020年までは「基盤を整える」フェーズでした。
そして、
今回サウジアラムコが上場して資金調達されたのは2019年12月なので、
2020年以降の「成果を出していく」フェーズに入る前の
基盤の最終構築段階だったと見て取れますよね。
2020年以降は「成果を出す」というフェーズに入るので、
ひょっとすると2025年までの5年間で、
アラムコが世界中の証券取引所に上場しているかもしれません。
また、
サウジアラムコで調達した資金は国内のインフラ整備や教育、
そしてサウジアラビアの政府系ファンドである
「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」
への資金に活用される予定となっており、
IPOで調達したお金を再投資して、
さらに国内外への投資を強化しようといった計画がなされています。
サウジアラムコの上場による世界経済への影響やリスク
以上のような経緯で、
当時ムハンマド皇太子は
「IPOして時価総額2兆ドル企業を目指す」
と公言していましたが、
結局サウジアラムコの評価額は引き下げられ、
1.7兆ドルでIPOすることとなりました。
なぜなら、
「2兆ドルという時価総額は高すぎる」
と多くの投資家が二の足を踏んだからです。
(※その後は上場してすぐに
2兆ドルの時価総額を達成することになるのですが…。)
中には「企業価値は1.5兆ドルよりも低い」
と評価するアナリストもいるくらいでしたが、
サウジアラムコが過剰に評価されている
可能性があるのはもちろんのこと、
アラムコ上場によってもたらされるリスクが懸念点としてあったわけです。
では、具体的にアラムコに
どんな懸念やリスクがあったのか順番に見ていきましょう。
- 情報の透明性に関する懸念
- 原油の価格変動や需要に関する懸念
- 中東の地政学リスクへの懸念
サウジアラムコの情報の透明性に関する懸念
まず最初に懸念されているのが、
サウジアラムコの情報の透明性の低さです。
サウジアラビアは国や王族の力が強い独裁国家で、
実際にサウジアラムコの株式も
今回市場に解き放たれたのは全体の内のたった1.5%程度。
つまり残りの98%の株式は、
サウジアラビア政府が保有したままとなるので、
アラムコの発言権は98%政府にあり、
政府の意向でどうにでもなるということなんです。
いわゆる「サウジ政府の持分が高すぎるんじゃないか問題」ですね。
サウジアラムコは王族が独裁的に経営している国営企業なので、
当然経営の透明性が高いとは言えません。
ここが海外投資家にとっての大きな懸念点となり、
「株主の利益よりも国益が優先されるんじゃないか」
といった不透明な部分が問題視されました。
このようにアラムコでは、
独裁経営で経営の透明性があまりないという見方が高まり、
独裁国家が出す情報の信頼性が疑われるようになったのです。
そこで、
「お前たちの企業価値は割高だろ」と言わんばかりに
世界のアナリストがアラムコの評価額を叩いたわけです。
そもそも、
本当に12兆円の利益を出しているのかも不透明ですし、
政府という中央集権によって、
株価や経済をコントロールされてしまう恐れだってありますからね。
原油の価格変動や需要に関する懸念
次に懸念されているのが、
原油の価格変動や需要によるリスクです。
サウジアラムコは約2.7兆円の資金を
調達して上場したわけですが、
そもそも今後の石油産業の行方も懐疑的で、
斜陽産業になり得る可能性だって大いにあるでしょう。
世界では環境問題への関心が高まりつつあり、
海外の投資家は環境・社会・企業統治などに配慮する
企業へ投資を行う「ESG投資」を重視している傾向があります。
なので、
石油産業のセクターに分類されるサウジアラムコに
割高感を抱く投資家がいるわけです。
なお、日本はサウジへの石油依存度がかなり高いので、
万が一サウジアラムコがコケると、
少なからず日本にも影響する可能性が出てきます。
出典:帝国書院
このように、
日本の石油の輸入先は圧倒的にサウジアラビアで、
石油の輸入全体の約40%の割合を占めています。
なお、
原油の価格変動がアラムコの利益に直結するので、
今後原油価格が大きく暴落するとなれば、
アラムコだけに留まらず、
関連する世界の株式が大きく暴落してしまうかもしれません。
原油価格を操作するサウジアラビア
さらにアラムコの上場に伴い、
今後サウジが原油価格を
吊り上げて行くのではないかといった懸念もあります。
12月6日に開催されたOPEC総会では、
石油の追加減産が決定されました。
減産とは、原油の生産量を減らすことですが、
減産すると原油の需給バランスを引き締めて、
原油相場を上げていくことができます。
原油はそれに取って代わるような代替品がほぼ存在しない為、
当面は一定の需要が見込め、
価格が上がったとしても需要が極端に落ち込むことがありません。
なので、
原油の減産に関する事項が決まると
原油相場は上がる傾向にあります。
今回のOPECプラス全体で、
現行の削減量に日量約50万バレルを追加すると決められ、
50万バレルの削減を2020年の1月から3月まで実施し、
次回以降の会合も来年3月以降にいくつか行われることが決定しました。
そもそも2017年1月からの3年間ずっと減産が行われていましたが、
これに加えて50万バレルを追加することとなったので、
12月6日の原油相場は一気に高騰しました。
もちろん米中貿易戦争などによる
世界経済に対する懸念もあってのことだと思いますが、
今回IPOをしたアラムコの株価を引き上げる為に
「意図的に原油相場を吊り上げる」といった
サウジ政府の意向も汲み取れますよね。
なので今後の原油相場は、
アラムコの都合によって動いてしまう可能性もあると予想できるでしょう。
このように、
原油価格やアラムコの株価をなんとか維持したいという
サウジアラビアの政治圧力も絡んでくるわけで、
急な原油相場の乱高下や、
原油価格の上昇による為替相場の変動も考えられるわけです。
一般的な見方としては、
原油価格と米ドル相場は逆相関の関係にあり、
原油が上がると米ドルが売られる要因となり、
反対に原油が下がると米ドルが買われる要因となりえます。
原油相場 | 米ドル相場 |
原油高 | 米ドル安 |
原油安 | 米ドル高 |
なので、
原油価格と為替の関係を踏まえた上で、
今後の市場には十分に注視しておいてくださいね。
中東の地政学リスクへの懸念
そして、
サウジアラムコの懸念としてもう一つ考えられるのが、
中東の地政学リスクへの懸念です。
サウジアラムコは2019年9月にドローン攻撃を受け、
国内のアブカイクとフライスにある計19ヶ所の施設が爆撃されました。
それによってサウジアラビアの石油生産量の約半分、
そして世界の石油生産量の約5%が減少してしまい、
その後オイル市場では原油先物が急上昇しています。
しかも、
1機160万円程度のドローンが、
約11兆円もかけられていた
サウジアラビアの防衛網を簡単に突き破ってしまったんですね。
つまり、
今後いつサウジが襲われてもおかしくないということであり、
いつ潰れるのかわからないのです。
アラムコは既に数百兆を超えるような規模で
上場してしまいましたから、
これがドローン攻撃なんかで崩れるとなると、
一気に株式市場にダメージが加わる恐れがあります。
なので、
今後も引き続き攻撃を受ける可能性があるということ、
そしてそれに伴い原油相場の上下もあるということについて
常に気をつけておかなければなりません。
サウジアラムコの行方によっては日本のソフトバンクも危機に陥る?
なお、今後サウジアラムコが万が一危ない状況になると、
日本のソフトバンクも倒産の危機に陥るかもしれません。
サウジのパブリック・インベストメント・ファンドはソフトバンクに出資している
そもそもサウジアラビア政府の
「パブリック・インベストメント・ファンド(以下PIF)」は、
ソフトバンクの「ソフトバンクビジョンファンド」に約5兆円の出資をしています。
ソフトバンクビジョンファンドとは、
2017年にソフトバンクグループが発足した10兆円規模の超巨大ファンド。
このビジョンファンドの
二代出資者のうちの一つがサウジのPIFです。
ビジョンファンドと言えば、
最近コワーキングオフィスを運営する「WeWork」への投資にて
大きな評価損を抱えてしまったことで話題となりましたよね。
WeWorkへの投資によるビジョンファンドの損失分は約4,000億円。
孫さんも決算発表で
「ボロボロ、真っ赤っ赤の大赤字」と嘆いていたほどでした…。
かつてはアリババへの投資で
大成功を収めたソフトバンクですが、
今はビジョンファンドで投資の大失敗を重ねているのです。
今後PIFがビジョンファンドから資金を引き上げる可能性もある
さて、そんな孫さん率いるビジョンファンドは
10兆円という大きな規模となっていて、
そのうちの約半分を占める資金をサウジのPIFが投資しています。
しかし、
今後サウジアラビアでは「サウジビジョン2030」も控えており、
そこには莫大な資金が必要となります。
そんな中、
サウジアラムコが思わしくない結果に終わってしまったり、
ビジョンファンドがまた投資でやらかして
大損を続けるような結果が続いてしまうと、
サウジ政府はビジョンファンドへ出資していた
大量の資金を引き上げる可能性も出てくるわけです。
仮にビジョンファンドへの大型出資者であるPIFが
引き上げるとなれば、ビジョンファンドの約半分の資金が失われ、
最悪ソフトバンク株が大暴落して倒産してしまうかもしれません。
大きなお金が動くからこそ、それが崩れた時のリスクも大きい
そもそも、
サウジのPIFが大量に資金を投じたのは
ビジョンファンドの「1号ファンド」であって、
1号ファンドに次ぐ2号ファンドについては、
サウジのPIFが資金を投じない可能性が報道されています。
2019年12月、未だにソフトバンクグループと
サウジアラビア政府との協議は続いているようですが、
今後サウジにそこまで余裕のある潤沢なお金が余るかどうかは疑問でしょう。
幸い12月11日の上場は無事成功したアラムコですが、
再びアラムコにドローン攻撃が加えられたりした場合、
アラムコの損失→PIFへの悪影響に繋がる
PIFの損失→ビジョンファンドへの悪影響に繋がる
といった悪循環となり、
巡り巡ってソフトバンク株にも
大きな打撃が与えられる可能性が出てきます。
なおソフトバンクは
日経平均株価の代表銘柄として組み込まれており、
日本経済に与える影響力も大きいので、
ソフトバンクの下落は
日経平均の下落に直接関係します。
このように、
サウジアラムコの先行きこそが、
ソフトバンクをはじめとする
日本経済の命運を分けるといっても過言ではないのです。
サウジアラムコは今後海外での新規上場も視野に
今後サウジアラムコは
2020年以降に海外でも本格的なIPOを実施する予定となっています。
元々は海外の市場をメインに
発行済株式の内の5%を公開する予定でした。
しかし上述の通り、海外の投資家達から
企業価値の過大評価について散々に叩かれ、
結局規模を縮小させて今回1.5%の株式を国内で上場させたわけです。
なお、次の海外でのIPO打ち上げ先候補には、
ニューヨークやロンドン、香港などが挙げられていますが、
実はそれらに並んで日本の東京証券取引所も入っています。
なので、
「東証に上場するんじゃないか説」
も一部では噂になっていたりします。
もしもそれが実現すれば、
みんな飛びつくように応募するかもしれませんが…。
とにかく、
サウジ以外の証券取引所で
アラムコが上場することとなれば、
サウジは国内に留まらず、
グローバルに資金調達ができるようになるでしょう。
ここは状況が分かり次第、
改めて追記する予定にしています。
なお、
中国では国家規模で50億〜100億ドル規模の投資をすると言っており、
引き続き、大量の資金がサウジアラムコに向かう可能性があります。
まとめ:今後もサウジアラムコの値動きには要注意
サウジアラムコのIPOまとめ
- サウジアラムコは史上最大規模のIPOで上場し、時価総額や純利益も上場企業の中で世界最大となる
- サウジアラビアは世界有数の石油輸出大国である自国の脱石油を目論んでいた
- サウジアラムコには政治的リスクや地政学リスクなどの懸念がある
- 2020年以降、サウジアラムコは海外の証券取引所に上場する予定となっている
以上、上場二日目にして
企業価値が2兆ドルを突破したサウジアラムコですが、
果たしてどのくらいの時価総額が
フェアバリューなのかも現時点では不透明ですし、
地政学リスクや政治的リスクなど、
懸念点もまだまだたくさん残っています。
そして今回のアラムコの上場に伴い、
今後は原油が大きく上昇する機会も訪れるでしょうし、
相場にポジションを入れている方は
一層注意深くマーケットを見ておく必要があるでしょう。
繰り返しですが、
原油が上がると米ドルが売られる要因となり、
反対に原油が下がると米ドルが買われる要因となりえます。
特にサウジアラビアは、
なるべくアラムコの企業価値を上げて、
より多くの資金を調達したいはずですから、
今後も“サプライズ減産”などによる
原油価格の引き上げが続いてもおかしくはありません。
なので、
原油価格の変動に伴う
為替相場の動きには一層注意が必要でしょう。
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