2017年2月のドル円相場は何となくマッタリ。
レンジ相場入りという感じですが、
経済番組で某アナリストが語っていた言葉を借りると、
トランプ政権は具体的な減税や財政政策を
2月末までには打ち出せないのではない?かとの指摘をしていました。
フランスの政局に暗雲が垂れ込めていることもあり、
リスク回避の円買いになびきやすい環境にあるというのが同氏の見立てです。
しかしながら、
この方は筋金入りの円高論者なので
主張もそれにそった材料ばかり拾い集める傾向があることを考えれば、
いかに優秀なアナリストとはいえ、妄信するのは禁物ともいえます。
チャートを見ながら考えてみよう
先ずは米国CME金利先物市場の参加者が織り込む利上げ確率の推移は以下の通りです。
![米国CME利上げ確率の推移](https://i2.wp.com/fxism.jp/wp-fxism/wp-content/uploads/2017/02/b55631406ec7c2127858d0c4e17924af.png?resize=597%2C367)
これ自体はなんとも面白くないもので、
3月の利上げ予想確率はまだ20%台ということでまるで盛り上がりがありません。
それよりも注目するべきは下記のチャートです。
![FF金利レベルの加重平均値の推移](https://i0.wp.com/fxism.jp/wp-fxism/wp-content/uploads/2017/02/42be5788cd3fc55f0d3faf0018c1107d.png?resize=588%2C479)
同ページのV列に今年12月13日に予定されているFOMCの時点で
市場が予想しているFF金利レベルの加重平均値の推移を計算しています。
例えば2月21日クローズ時点での
加重平均予想FF金利水準は1.236%との計算結果がでました。
![加重平均予想FF金利水準](https://i2.wp.com/fxism.jp/wp-fxism/wp-content/uploads/2017/02/b007f06acf0c185c42b75bb8305d8fb2.png?resize=582%2C476)
現在のFF金利目標水準が0.50%~0.75%なので
その中央値を0.625%、1回あたりの利上げが0.25%とすれば、
(1.236% – 0.625%)/ 0.25% ≒2.4ということで
市場は12月までに2.4回(2回よりは多いが3回には満たない)の
利上げが行われると織り込んでいることになりますね。
前回、12月のFOMCで利上げが行われたとき、
2017年12月までに2.5回の利上げがあることを織り込んでいたのですが、
10年物米国債の利回り推移をみてもわかるように
その後一向に上昇する気配がないことが、
米ドル買いに勢いがないことを説明する根拠ともいえるでしょう。
特にユーロ圏と違って政治的な混乱がない円と対比すると、その傾向が鮮明といえます。
トランプは口先が先行するから微妙なところです。
下のチャートは米、日、英、ユーロ圏の2年物国債利回りと
10年物国債利回りの利回り格差(イールドギャップ)の推移をみたものですが、
これをみるとやはりトランプの勝利は
明らかにゲームチェンジャーとしての象徴的な意味合いがあったのではないかと思います。
![米、日、英、ユーロ圏の2年物国債利回りと10年物国債利回りの利回り格差](https://i2.wp.com/fxism.jp/wp-fxism/wp-content/uploads/2017/02/167d984b4f04ce5321d94ee92e0e2b2c.png?resize=570%2C470)
即ち、どの国をみても
長期金利の上昇スピードが短期金利のそれを上回った結果
イールドカーブが立った状態になった、
少なくともこの2ヵ月はそうなっているということが見て取れますね。
その割にお膝元の米国のスティープニングに
勢いがないのが物足りないところではありますが、
先進各国の金利構造に変化が出始めていることは注目に値します。
日本の場合は黒田BOJの金融政策に
ほころびが出始めていると取った方がいいのかも知れませんが、
他国と整合的な動きとなっていることは間違いないでしょう。
下記のチャートは、日米の5年物インフレーションスワップ金利
(実質金利と考えてください)の差を追ったものが青、
ドル円為替レートの推移が赤で表されています。
![日米の5年物インフレーションスワップ金利](https://i1.wp.com/fxism.jp/wp-fxism/wp-content/uploads/2017/02/a1fe7ca54511d9caca9c2d0516aec835.png?resize=579%2C372)
(参照―ブルムバーグ)
少なくとも2015年6月末からの1年7か月あまりの期間において、
為替レートの変化は5年物実質利回り格差の変化を
忠実になぞっていることが確認できるかと思いますが、
今の水準が落ち着きのいいところのように見えてきます。
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