アービトラージとは何か?
アービトラージ(Arbitrage)とは、
日本語では「裁定取引」と呼ばれるものですが、
もともとフランス語が英語化したもので鞘を抜くという意味だったそうです。
最初に使われたのは、ある株式市場において買った株式を
別の市場で売却して価格差を得て利益とするような裁定取引だったと言います。
これは同じ相場の商品の価格が
市場の歪みから別の場所で二つの価格で売買されることが生じ、
安いところで買い、高いところで売れば
その差をリスクなく利益として享受できるというもので、
金融の世界ではよく起こる取引といえました。
ただし、アービトラージが起きる大体の金融商品は
その利益が非常に少ないため、
大量の売買を伴わなければまとまった利益を得ることができないことがひとつのネックとなります。
これが転じて、同じ商品において最も良くて安いモノを調達し、
高い市場で売ることもアービトラージの一例です。
伝統的なバリューチェーンをバイパスして、
産直のような形で売ってしまうところにも利益の源泉があると言われています。
確か、私がUS MONEY MARKET視察でニューヨークにいたころ、
銀行の数あるセクションの中に
アービトラージ・セクションがあって機能していたように思えますが、
何しろ見る商品が初めてのものばかりだったので詳細は覚えておりません。
最もその頃は主要国の市場金利は高く、
色々な意味で歪みがあったため、
そこをターゲットにして大量の資金を投入して鞘を抜くことが可能だったのでしょう。
裁定取引は、機関投資家などが大きな資金で
サヤ抜きを狙う手法として使われるのが一般的なので、
その取引が市場全体に与える影響も比較的大きく、
マーケットを見るうえでは、その動向もチェックしたいところです。
日本経済新聞のマーケット総合面では、
株式市場の裁定取引の残高などが記載されています。
なお、裁定取引は、その取引を積極的に行う市場参加者が増えるほど、
市場の歪みが短時間で解消される方向に働くため、適正な価格形成に役立っているともいわれます。
FXにおける裁定取引
相対取引であるFXでは、各社の為替レートが同じとは限りません。
まれに1社だけが乖離したレートを提示することもありますが、
大分前の話ですが、そうしたレート差を利用して、
1週間で億単位の荒稼ぎをしたという個人投資家が存在しました。
そのやり方は、
その当時は2社のレートに開きがあった場合が現実的に存在し、
A社だけ一瞬レートがおかしくなって、
でもすぐにB社と同じレートに戻るとわかっていれば、
両建てで確実に収益を得ることができたのです。
現実的にも問題視された悪徳FX業者が、
一瞬だけレートがおかしくなって(現実のレートと剥離したレート)にして、
またすぐに戻すというような価格操作をやっていたことがあります。
これは、この動きを明らかに狙った
大口顧客をターゲットとしたストップ狩りだったのです。
その個人投資家に苦汁をなめさせた
ストップ狩りを発見して逆用したのが、FXにおける裁定取引です。
FXにおける裁定取引は、
もしも不自然に思えるレートが実勢レートだったときのための
リスクヘッジとして両建てをするのですが、
その業者の傾向がわかってくれば、
両建てはせずに不自然なレートの方だけ取引する片バリ(ONE WAY)をすることもあります。
ただ、今の規制だらけのFX業界において
こうした不自然なレートを提示する会社はもうあまり残っていないのではないかと思います。
仕入先の異なる為替の値段が反映されるまでに時間がかかることが多かったので、
1番安いFX会社Bで買って、
買った瞬間に一番高いFX会社Fで売って利益を稼ぐという手法がとれることは事実ですが、
現在のFXアービトラージは価格の差が
ほぼゼロになってしまって不可能に近くなっているはずです。
株式市場における面白い現象を利用する
値動きがほとんど同じ株を2つ選ぶ。
(例えば、同じ業界の
三菱UFJと三井住友フィナンシャルグループは、
余程の事がなければほぼ連動する)
2つの株の値段に差が大きくなる時を待って安い方の株を買って、
高い方の株を売る(株を持っていなくても売れる方法を空売り)のだが、
2つの株の値段の差が少なくなったら決済して利益を確定をするという手法です。
金融業界における代表的なリスク。
- 価格変動リスク
→株などの値動きによって起きるリスク。
例:買った後に値段が下がって損をした - 金利リスク
→金利が上がったり下がったりすることによるリスク。
例:住宅ローンを変動金利にしたら金利が上がっていってしまって支払総額が増えた - 信用リスク(デフォルトリスク)
→お金自体がかえってこないリスク。
例:銀行が潰れてしまって預金が返ってこなかった。お金を貸した友人が逃げてしまった。 - 為替リスク
→日本円から他の通貨に変えた後の為替変動によるリスク。
例:ドル預金をしていたら、円高になってしまい円に戻したら損をしてしまった。 - 流動性リスク
→お金が必要な時にお金にできないリスク。
例:養老保険を投資代わりにしたが8年経過しないと元本に戻らないと言われた。
事業投資をしたが、10年後までは現金にできない契約だった。 - インフレリスク
→物の価値が上がっていき、現金の価値が下がっていくリスク。
例:缶ジュースが110円から120円に値上がりした。欲しかった家が5%も値上がりした。 - カントリーリスク
→国自体の政治情勢や法規制などによって損失を受けるリスク。
例:香港に口座を作ったら国の規制で口座が凍結されてしまった。
アルゼンチン国債を買ったらアルゼンチンが崩壊してしまった。
以上のようなリスクがありますが、
アービトラージは価格変動リスクのみノーリスクだと言えますが、
FXアービトラージもブックメーカーアービトラージも価格変動リスクはありませんが、
価格の誤配信やアービトラージソフトの誤作動があるかもしれませんし、
FX会社やブックメーカー会社が窮地においこまれる可能性は否定できません。
価格変動リスクがノーリスクだから、
すべてのリスクが無いと考えるのは全く持って間違いです。
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