クレジット・デフォルト・スワップとは?
クレジット・デフォルト・スワップ=Credit default swap=CDSとは、
信用リスクの移転を目的とするデリバティブ取引でもあり、
一定の事由の発生時に生じるべき損失額の補塡を受ける仕組みをとるものです。
CDSは銀行の自己資本比率を向上させる対策のために利用されていますが、
USドルやユーロの動向にも大きな影響を与えています。
ギリシャなどの債務危機で欧州が揺れる背景で
信用リスクを回避する手段である
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)に注目が集まりました。
ギリシャ国債などを対象とするCDS保証料率の変動は欧州各国の信用力を示し、
欧州危機の先行きを見通すためのバロメーターにもなっているためです。
CDSとは何か、その基本的な仕組みやリーマンや欧州危機などを例にご紹介してみましょう。
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の仕組み
参考:http://toyokeizai.net/articles/-/2135
過去、サブプライム問題による市場の混乱や金融機関の破綻でクローズアップされたのが、
CDS取引におけるカウンターパーティ、つまり取引相手のリスクです。
CDSは信用リスクを取引するもので、
基本的に保有債権の信用リスクをヘッジする手段として広く使われています。
信用リスクとは何か?
信用リスクとは、融資先や社債の発行体が債務不履行に陥るリスクを意味します。
これはとても大切なことなので、覚えておきましょう!
欧州銀行のCDS
(参照-CMA)
例えば、ドイツのDAX指数は、
2016年初の10,500から7月9日時点で9,600程度と10%下落で済んでいますが、
欧州の金融株全般の株価は軟調です。
特に、上記のチャートのベージュ色ラインのドイツ銀行の株価は、
年初22ユーロ程度あったところが11ユーロまで下落して
IMFが発表した金融システム安定性評価レポートでリスクが高い銀行として示されました。
その結果、アメリカFRBのストレステストでも不合格になったのは記憶にも新しいです。
CDS市場が織り込むドイツ銀の劣後債のデフォルト(債務不履行)確率は24.5%、
シニア債のデフォルト確率は17%に上昇し、
株価急落の背景には、世界経済の成長減速や
低金利の長期化への各行の対応能力をめぐり懸念が生じていることが理解できます。
ドイツ銀行のCDSがかなり高くなってきたので
どれくらい厳しい状態なのかをリーマンと比較して考えてみました
以下は、2016年7月8日のデータです。
- ドイツ銀行のCDSは、258.46。ドイツ銀行の格付は、BBB+/Baa2
この数値が異常なレベルというので
同等の米銀の格付の金融機関と比較してみましたのが下記のデータです。
- バンカメ(BOA)は、91.29。シティは、91.89.格付は、BBB+/Baa1
トリプルBの格付なので、
ぎりぎり投機的格で財務はそれほど良くないという評価を表しています。
ドイツ銀行のCDSは258.46とありますが、
これがどれくらい悪い数値なのかはリーマンブラザーズと比較してみましょう。
リーマンブラザーズの破綻
リーマンブラザーズが破たんしたのは2008年9月のことです。
この時、米連邦破産法11条の適用を申請し破綻しましたが、
5YCDSは600を超える程度で取引されていたようです。
当時も資産の質が悪いと評判だったリーマンですが、
あっという間に破綻劇で600というのは
破綻前にしてはかなり低い数値ですが、目安になったと言われています。
リーマンの過去のデータを見ると、
2008年2月頃にCDSは一旦400を超えたのですが、
その後落ち着きを取り戻し、2008年5月頃には、200を割るところまで下がりました。
ただそこからは急上昇して600前後で突然破綻という結果でした。
ドイツ銀行の現在の250というのは危険水域まできていることは間違いなさそうです。
仮に、400前後に上昇し、他の金融機関が破綻すれと連鎖的な金融危機もあり得るレベルです。
今のところはドイツ銀行やイタリアのウニクレディトや同じく
イタリアのモンテパスキは、規模は小さいものの、
対応が後手に回るとここが起点に連鎖する可能性もあります。
リーマン破綻後、実はAIGのCDSが、1908.2となっていましたが、
AIGは巨額のCDSのカウンターパーティになっており、結局国に救済されました。
リーマンショックの問題点は、
リーマン一社で済めば対応できる問題が、
連鎖的にAIGも大きな影響を受けて倒産寸前となったことですが、
金融危機が問題なのは、世界の金融機関は相互に依存しているので、それぞれに影響が連鎖する事です。
アメリカのリーマンショック時から、
英国の金融機関も大きく影響を受けてCDSは上昇していますが、
ドイツ銀行が今以上に危なくなり、
ドイツ銀行は救済出来ても、
連鎖的に起こる金融危機に対して、例えばクレディスイスもウニクレディトも異なる国の銀行なのに、
統制がきかなくなりつつあるEUが救済できるか否かの問題になってしまうのです。
各国のCDS
CDSの取引の対象は、企業などのクレジット・リスクですが、
クレジット・リスクのデリバティブ取引ですから、
一義的には、対象となる債務者が倒産すると、大きな動き(≒決 済)があるはずです。
CDSで大きな動きにあたる決済は
「倒産した発行体が発行した債券」 と
「債券の額面金額(=額面の 100%)の現金」とを交換するというものです。
倒産した発行体が発行した債券は必ずしも無価値となるわけではありませんが、
一方で額面の100%が戻ってくることはまず期待できないことも確かですから、
そのような債券を額面の100%相当の現金と交換するということは、
何らかの価値が移動していることになります。
伝統的なクレジット・リスク感、
つまり、潰れていない安全な債務者と、
潰れてしまった債務者とに債務者を二つに区分できるという感覚からは、
CDSは損失補償の役割を担います。
債券を保有している人が、
発行体倒産に際して額面をもらって債券を渡す側でCDS取引を行っていれば、
実際に発行体が倒産した場合には
持っている債券を渡して額面金額を受け取ることができるのですが、
逆に、倒産した発行体の債券を受け取る代わりに額面金額の現金を渡す側から見れば、
発行体が倒産して債券の価値が大幅に下落している時に、
その債券を額面の100%で購入するのと同じですから、損失の穴埋めをしてあげることに他なりません。
このような契約が無料であるはずはなく、補償を受ける側からお金を払わなくてはいけません。
この補償を受ける権利をプロテクションと呼びますが、
プロテクションの料率は、対象となっている債務者の債務返済能力に応じて異なります。
わかりやすく言えば、プロテクションという商品を取引していると考えることで
プロテクションの料金は、その対象が脆ければ脆いほど高くなりますし、
対象が堅固であればその分安くなります。
結局、特定の債務者の財務状況が悪化すると、
その債務者の発行した債券や、その債務者にお金を貸している人は、
以前よりもプロテクションに価値を見出すはずで、その結果プロテクション料が上昇します。
逆に、財務内容が好転すれば、プロテクションの価値は下がりますし、
多くの人がプロテクションを提供したくなるでしょうから、プロテクション料が下がっていくのです。
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