インターバンク市場でのFX会社の役割とは?

ドル/円の取引における実需と投機の違い

個人がFXでドル/円の取引をするときの目的は、ほぼ差益狙いです。

狙いどおりにレートが動いたら反対売買をして利益を確定させる取引です。

狙い通りにならなくてもやはり反対売買して損失が確定します。

いずれにしてもそう遠くない将来のどこかで反対売買をするので、投機的な取引の仲間です。

 

一方、差益狙いではない(=反対売買をしない)、実務上必要なドル/円の取引もあります。

企業の活動ではむしろほとんどがこちらで、
例えば原油の輸入業者は日本国内で原油を売った円をドルに換えて海外の産油業者に代金を支払いますし、
自動車の輸出企業は売り上げのドルを円に換えて国内での支払いにあてます。

また、海外で子会社を作るなどの投資活動に伴って発生する為替取引もあります。

こういった取引には反対売買は発生しません。

個人が海外旅行で買い物のために両替をするのもこのカテゴリになります。

 

こういった実務の為替取引は主に銀行がやってくれます。

おおざっぱにいって、原油の輸入業者や自動車の輸出業者は、
銀行に持った円建ての口座とドル建ての口座の間で資金を交換する、と理解していればいいでしょう。

 

銀行は「インターバンク市場」で利益を狙っている

さて、各企業から為替の注文を受けた銀行は、
どこかでドル/円の間の交換を実行しなければなりませんが、
そこには証券取引所のような「中央」は存在しません。

それがインターバンク市場です。

ここに各銀行や証券会社がレートを提示して取引を行います。

規模の大きな金融機関だけが参加するプロ同士のやりとりです。

ここでは、貿易の1件ごとの取引に応じて為替取引をするわけではありません。

ある銀行にきた注文が、輸入企業Aからのドル買い150万ドル、
輸出企業Bからのドル売り100万ドルがあったとしたら、
差額の50万ドルをインターバンク市場で調達し、
B社から受け取った100万ドルと合わせた150万ドルをA社の口座に入れてあげればいいのです。

このとき、ドルをいくらでどういうタイミングで調達するかの判断は完全に銀行に任せられています。

この判断のことを「ディーリング」といい、
できるだけ安くドルを調達できればそれだけ銀行の利益が増えることになります。

逆に、顧客の各企業に約束したレートより
不利な条件でしか調達できなければ銀行は損失を被ることになります。

インターバンク市場の特徴

  • 金融機関だけが参加する
  • 大口の注文が中心
  • 金融機関は顧客の注文を単に取り次ぐのではなく、ディーリングによって巧みに収益を狙っている

 

株には取引所があるけどFXには?

一方、株式の取引の場合、そのほとんどは証券取引所でなされます。

日本の場合、さらにそのほとんどが東証で行われます。

証券会社はたくさんありますが、実店舗の証券会社でもネット証券でも、
それらは東証へ注文を出すのを中継しているだけです。

完全に同じ銘柄・注文内容・時刻に発注すれば、
どの証券会社を利用しようとも、起こる結果は同一なのです。

違うのは手数料(これは証券会社により異なります)だけです。

 

意外に自由度が高いFX会社の役割

ではFX会社は何をしているのでしょうか?

一般個人の小口注文を受け付けるのは証券会社と同じですが、
その先にインターバンク市場につながっているのが株式取引とは違うところです。

いま、個人からのドル/円の買いが1万ドルずつ100件、計100万ドルきたとします。

FX会社は、その100の注文をひとつひとつインターバンク市場に流したりはしません。

ディーリングの判断次第で、10万ドルの注文を10回に分けて出すかもしれませんし、
100万ドルの注文を1回流すのかもしれませんし、はたまた全く流さないかもしれません。

この、FX会社がインターバンク市場に流す注文を「カバー」、
注文が執行されることを「カバーを取る」と言います。

FX会社の特徴

  • 小口の注文を受け付ける
  • いちいちインターバンク市場に流さず、ある程度まとまった段階で「カバーを取る」

最近は、「インターバンク直結型」を謳ったFXのサービスもいくらか出てきました。

これらは顧客の注文を逐一インターバンク市場に流すタイプのサービスですが、
一般的には取引単位が大きい・約定率が低い・別途取引手数料が徴収される、といった傾向があります。

FX会社はカバーの取り方で利益がずいぶん変わってきます

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株式の場合、東証のリアルタイムの注文状況はどの証券会社でもわかるので、
出した注文が取引所に届いたかどうかは東証のデータを見ていればわかります。

ところが為替の場合、出した注文がその先にどう処理されるのか、
注文を出した側からはまったくわからないブラックボックスなのです。

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