ブレグジットとは?
ハードブレグジットを説明する前にブレグジットを説明しておきましょう!
ブレグジット・BREXITとは、
2016年に国民投票にて決定された英国のEU離脱を指す造語であって
英国のEU離脱が決まれば政治や経済等に大きな影響が出ることから広まったもので
「British(英国:イギリス)」と「Exit(離脱)」の2つを組み合わせて造られたものです。
ハードブレグジットとは、ブレグジットに伴って、
英国が欧州の単一市場へのアクセスを失うことです。
英国が経済よりもより移民制限を優先する強硬姿勢でEU離脱交渉を行うことを意味するのです。
英国のEU離脱の要因
英国でEU離脱への関心が高まった背景には、
ドイツや他のEU主要国同様に他国からの移民の急増が大きな要因です。
英国は2000年以降、ブレア元首相下において
東欧などEU新規加盟国から移民を受け入れてきたのですが、
好調に推移してきた経済化の中で多くの移民を受け入れたことによって
労働力は増加してさらに移民たちを安価で雇用することができました。
これが要因で英国の経済は右肩上がりとなりましたが、
2008年のリーマンショックを経過後、状況が急変してきたのです。
どのように急変したのか?
移民に職を奪われた失業者の不満が募って
社会福祉制度にとっても重荷となったのに加えて、
シリア内戦長期化による難民対策や、
農業に偏重したEUの分担金の予算配分へも不満が高まり
(英国はドイツやフランスに匹敵するほどEUに分担金を払っている)、
英国のEU離脱問題へと発展してきたのでした。
上記のような背景でハードブレグジットは欧州の単一市場へのアクセスよりも
移民の受け入れに制限をかけることを優先するEUの離脱方法といえます。
S&P(グローバル・レーティング)公表:
EU離脱における影響が大きい国
S&Pが公表している英国のEU離脱における影響が大きいとされている国は以下の通りです。
上から順に輸出入が多く、金融の関係が深い順に並んでいます。
- アイルランド
- ルクセンブルグ
- ベルギー
- スペイン
- フランス
- ドイツ
- イタリア
ちなみに、ロシアも影響が大きい国として認識しなければいけません。
ロシアは欧州が自国産エネルギーの最大の供給先です。
欧州向けの原油輸出は全体の6割を占めており、
ブレグジットによって資源収入の減少が予想されます。
またロシアの政権の要人や富裕層の多くは
資産をロンドンで監理しているため、その資産の減少が予想されます。
中国の経済への影響も懸念されてきますが、
中国の英国向けの輸出額は約6兆円(2015年時点)と
意外に軽微で輸出全体の2.6%程度ですが、
海外市場不安が波及する可能性があることには注意が必要です。
我が国・日本にとっての影響
EU市場への足掛かりとして英国に拠点を置く日本企業は多く、
英国がEUを離脱した場合は日本企業の輸出コストが増加したり、
英国やEUへの事業の見直しも考えられますし、
英国のEU離脱は円高圧力がかかりやすく
収益面での下押し圧力がかかりやすくなることが予想されてくるのです。
英国に進出している日本企業
英国に進出している日本企業は、
トヨタ、日産、ホンダ、日立、
東芝、富士通、武田製薬を代表になんと1000社程度あります。
英国に進出している日本企業の35%は卸売販売、
24%が製造業で貿易に直接関税がかかってくると日本企業の業績への影響が懸念されてきます。
さらに英国のEU離脱によって
他のEU加盟国にも離脱の流れが波及してくる可能性が高まりますので、
EU自体への不透明感が増し、
それ自体が世界経済へのリスクになる可能性が高まります
(ポンド売り、ユーロ売り、円買い)。
債券から株式へのグレートローテーションの動き
債券から株式へのグレートローテーションの動きは
なにも2016年の米大統領選が引き金を引いたというのがすべてではなく、
現に英国のハードブレクジット懸念で2016年1月中旬の状況で再燃、
ポンドはいきなりフラッシュクラッシュのように暴落して始まったが、
英株式市場はしっかりしているではないかという事実があります。
年末年始【2016-2017】より14日間は連続で上げていたではないかという事実ですが、
グローバルベースで景気が上向き傾向であることを示す一例であり、
為替動向だけをみていると
資産市場の動きをミスジャッジする要素があるのではないのでしょうか?
政治リスクはもちろん経済の不安定要因であり、
政治リスクによる通貨の暴落は株式市場にとってもよくあるはずはないですが、
そこまで極端なことがなければ一般に通貨安は
自国輸出セクターにとっては国際競争力の強化であるわけで
一定範囲を大きく逸脱することがなければ、ある程度歓迎したいところではないでしょうか?
そこで、早速にポンドの対ドル相場とFTSE100株式指数の関係を!
先ず下の図は2016年の英国民投票の6/23までのポンド相場を横軸に、
FTSE100指数の引け値を縦軸にとったものです。
一見してポンド相場と株式指数に相関関係がまるっきりないのがはっきりわかりますね。
決定係数(R2)は0.022ということが理解できますが、
この決定係数は0から1までの間を取る数値で、
モデルの説明力(独立変数ポンドの従属変数FTSE100指数の変動に及ぼす影響度)が
2%しかないということを示しています。
それが国民投票後のデータですと
右下に赤枠で囲ったのは国民投票直後の数日間、
市場がまだ方向性を決めあぐねていた時に付けた数値で
いわゆる外れ値(アウトライアー)という現象です。
それでも、ポンドが下落するにつれて株式指数が上向く、
ネガティブな相関関係が出ていることを示しています。
ネガティブといっても心理がネガティブな訳ではなく、
ポンド安は株式の上昇要因になってきているという意味です。
そしてポンド動向が株式指数の動向を説明する
説明力である決定係数は0.4698…47%に上昇していることがわかります。
先程に書いた外れ値の影響を除去するために
6月30日から直近までの動きにデータ範囲を調整すると下記のとおりです。
前ページを参照するとポンド相場の英株式指数に対する説明力は
0.4865…約49%に2%ほど上昇しました。
株式市場の変動に影響を与える要素はそれこそ星の数ほどある訳ですが、
その中でも通貨動向の占める割合は約半分と決して小さなものではないのです。
因みに散布図上で赤に塗りつぶしている点は、
直近1月16日のポンド引値1.2047とFTSE100指数の引け値7,327が位置している点で、
図中に引いている回帰線(黒く細い線)を大分上回った水準で推移していることがわかります。
相場は行き過ぎると必ずその分
平均水準に回帰する(mean reversion)という説が成り立つのであれば、
ポンドが1.2ならばFTSE100は近い将来的にも
7,100の方向に向かって調整が入ることが示唆されますが、果たしてどのようになるのでしょうか?
2016年米選挙後の散布図
11月8から直近までの推移を散布図にしてみると(米選挙後)
なんと説明力(決定係数)が0.6105…61%にまで上昇してきているではないですか!
それに回帰線の傾きもその上の
-3014から-9006に上昇していることが見て取れてきます。
それに、直近のポンド、FTSE100の引け値は
ほぼ回帰線上にあたることになり、
決して株式市場が楽天的に過ぎているという訳でもないようです。
ハードブレクジットが経済に負の影響を実質的に及ぼすということがないならば、
この回帰線が今後の指針となる、例えば5%超上方に乖離していれば株売り、
5%超下方に乖離しているならば株ロング…
そんなことを戦略も有効かと思わせる内容で面白いです。
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