第4話「停滞」

明確に何かを掴んだ気がした
殆どの人間と結果が逆だった、しかも良い方に

この経験、そしてこの感覚は、生まれて初めてだった
多くの人達が負けた相場で私は勝ったのだ

物凄く嬉しく満足していた、デモ口座ではあるという事を除いては…

だが、この経験が私の現在の検証グセとデモ口座だろうが少額の口座であろうが、通常の自身の口座と何ら変わらず本気で取引できるメンタルに影響を与えている事は間違えない、やりたくてもできなかった期間があったことが大きいのだろう。

さて、それなりの大きな動きの相場を当てた
こうなると欲求というのはこの方向に向かう

再現は可能か?

私はこう考えた、ファンダメンタルズやニュースの内容から考えられる為替レートの推移予測。
これは非常に一般的なモノで大手金融メディアの記事でよく見るモノだ、現在の相場で代表的なモノは2国間の金利差や物価&雇用指標あたりになるだろう
それと逆行している顧客ポジションを探してはデモ口座で顧客の逆のポジションを取った
結果は勝ち負け半々くらいで勝率こそは高くないが、毎度当たった時は値幅が大きかった
逆に、負けた時の値幅は小さいのだ・・・

また、H氏の言葉が頭を過る
「だって、既にこんなに買ってるのに上がって来ないじゃん」


そうなのか?
いや、そうだよな?

例えば、
既に買いポジションが積みあがっているモノ
その逆のポジションを取るという事は、私は売るわけだが、

例え読みが外れて上がってしまったとしても上げ幅は大したことない
⇒参加者は既に大きく買っていて、それ以上買う参加者がいないので
だから、ポジションと相場が逆行し、負けた際の損失も小さい

逆に既に買いポジションが積みあがっていて、こちらが売った際に下げ始めたら大きく下げているという事か…
⇒既に大きく買っていてもう買う参加者がいないうえ、逆に買いポジションの解消(即ち売り)により下げ幅が拡大する

「ロスカット狩り」という事象がある
殆ど前述の繰り返しになるが
要は、保有ポジションの方向と逆に相場が動いた際、ポジション解消のために逆の注文を入れている事になり、その動きが拡大されるという現象。

例えば、買いポジションを大きく持っていたが、相場が下方向に大きく動いた際、その買いポジションの解消のため決済するということは、買いの決済=売り注文となり、売り注文が市場に出される。
その結果、タダでさえ下げていた動きに、更に売り注文が被って来る事により、下げ幅が拡大する。
という事なのだが、そこまで大変動でなくとも相場のそこ、ここで常に起きているという事なのだろう。

私は決めた、相場変動が起きるであろう材料(面倒なので以後ファンダメンタルズとする)が一定の方向を示しているにも関わらず、その逆方向にポジションが寄っている場合は、逆のポジション(ファンダメンタルズに対し正方向のポジション)を取るというのを自身の運用ルールに正式に組み込む事を

この当時の私はまだ
「ファンダメンタルズ?んなモン大相場にはカンケ―ねーよ」
とはなっていなかった 笑

この時点での私のルール
・イベントの結果ひとつでポジションを動かす必要の無いポジションボリューム
・ファンダメンタルズと顧客ポジションが逆行している時にお客の逆のポジション(ファンダメンタルズと正方向のポジション)を取る
この二つになった

私は勝ちまくった、ルールたった二つで

利食いと損切は明確なルールは無かったが原則デイトレードで翌日にポジションを持ち越すことは殆どしなかった、また、お客の売買動向に変更が生じない限りポジションの方向は一度も変えなかった

その後、100万円スタートのデモ口座が1か月後に300万円になり、その後は早かった
500万円、1000万円、2000万円と時間の経過と共に大台に乗せていくデモ口座。
いちからやり直しても資産が5倍、10倍と簡単に増えていった、だが所詮デモ口座であった

反面、私は仕事への情熱が日に日に薄れていくのを感じていた
素人にありがちな、この結果がデモ口座である事が勿体無い・・・と思い始めていた


数か月後、ついに私は決意した。
相場を張ろう。

H氏に相談したが、全く喜んでくれなかった。

「やるなら止めないけど」という感じだった。

相当な違和感があった
もっと喜んでくれる気がしていた
また、もっと相場の事を教えてくれるかもという期待があったかもしれない

相当な違和感があったものの、私の頭は単純にできており、既に自宅がトレーディングルームになって一日中、朝から晩までチャートを眺め相場の事を考えているイメージでいっぱいだった
人の欲求は心配事を超えるというのは、今だからわかる事だ

とにかく私は相場を張るための準備に入った。
まずは会社を辞めるしかない。
前にも触れたが、金融機関に従事する人間は自身の投資活動には結構な制約が付きまとう。
自由にバンバン取引するためには金融機関で役職についていると難しいのだ
他に方法が無い事も無かったが、新しい世界に踏み込むのに変に今までやってきた事を引き摺るのが嫌だった
また、自分の勝手で今ある職を辞するのに、会社に影響力が残る事に後ろめたさがあった

会社を辞めると言っても、私は経営者兼オーナーだ、辞めるには潰すか売るかしかない。(株だけ持っておくという方法もあったが少々めんどくさそうだった)
弱小FX業者と言っても黒字だったし、なんせピカピカのライセンスを持っている、私もある会社からこの会社を買収したのだが、この手の会社には殆どのケースで買い手が付く。

あるM&Aブローカーに連絡を取った
直ぐに買い手からアプローチが来た
私は早期売却希望だったので、物凄い勢いでペーパーワークをこなしたが、2ヶ月程時間を要した。
2ヶ月掛かったのは既存のお客様への対応とスタッフの処遇について抜かりなく事を運ぶ必要があったからだ
それでもコンサルティングからは物凄くスピーディな売却劇だっと感嘆された。
それだけ私は相場の世界に早く飛び込みたかったのだ

だが、ひとつ問題があった
私は浮かれていてその問題に気が付くのが遅かった・・・
私の取引ルールは・・・
① イベントの結果ひとつでポジションを動かす必要の無いポジションボリューム
② ファンダメンタルズと顧客ポジションが逆行している時にお客の逆のポジションを取る
① のポジションボリュームを制限する事は自分次第なので問題ない。
問題は②の顧客ポジションである

私はFX業者の経営者だったので、いつでも好きな時に顧客のポジションを見る事ができた
だが、辞めたらタダの個人投資家だ
従って、FX業者にどんな注文が顧客から来ているのか知るす術がなくなる・・・
無くなってしまうのだ・・・


私はFX業者を退職した後の初めてのリアル口座取引で

1000万円をひと月で全額失った…


さすがに、リアル口座取引スタート前には「顧客ポジション(以後、一般投資家売買動向)」が見れなくなることは理解していた。

その為、私は対策を立てた、よくよく調べていると顧客の売買動向をホームページで公表しているFX業者は幾つかあった
(自分が中の人だった頃の様にリアルタイムではないけど何とかなるだろう)
また、その時の私はデモ口座であっても何度も資産を5倍、10倍以上にした経験を持つ人間だった

相当自信があった、正直負けるのが難しいくらい思っていた。
今から考えると、あれほど調子に乗ったマヌケもそういないと思う…



私はとりあえずFXの取引口座を開設し1000万円を入金した。
FX業者数社のホームページを見て、一般投資家売買動向を確認し、ファンダメンタルズに逆行しているポジションを見つけては逆のポジションを取った。
3連勝くらいしたのを記憶している。

ところが、その後は鳴かず飛ばずになった

売買動向がブレるのだ・・・
FX業者といっても各社の顧客は様々で、1日の値幅が極端に小さくなったり、大変動が連続すると、A社では買いが増えてもB社では買いが減る
こんな事象が散見された
2016年、この年は前半はリスクイベントが多く、株価が大幅に下落したり、6月に英国が国民投票の結果を受けEU離脱(後にブレクジットといわれる)となったりとドル安となり、年後半にかけては米大統領選がありドルが大幅に買い戻されるという非常に激しい一年となった。
特に6月のブレクジット前後は為替相場が乱高下したため、今思うとポジションが一掃される事が多く、売買動向が一日の中で目まぐるしく変化してしまっていたのだと思う



以前の私は自身の経営する業者のポジションの推移だけを気にしていた
結果、ブレなかったし当たらなければ当たらなかったで淡々とポジションを手仕舞うだけだった、他に判断材料がなかった事が良かったのだ

ところが、監視する業者が増加するとA社では買い増加、B社では売り増加といった様にブレる事がある、解らなければやらなければいいのだが、ファンダメンタルズと逆行している方のポジションがあるとそれだけが気になり逆を張ってしまう、別の業者ではファンダメンタルズに準じたポジションになっているのに・・・
要は疑心暗鬼になってしまい、希望的観測でポジションを取ってしまった

それを何度か繰り返すうちに、勝ったり負けたりしたが、とんでもない副作用があった


日計りでの損切ができなくなっていた・・・


一日の終わり(NYクローズ)が近づくに伴い、ポジションが残っていたら、それを閉じる作業を行うのだが、値洗いマイナスがあるポジションを見ると
(明日は一般投資家売買動向が私のポジションとは逆に向かってるかもしれない)
と考える様になり、結論を翌日まで持ち越すようになった
簡単な話、ポジショントークを自分に向かって話してしまっていた

こうなったら負のサイクルで回り始めるのに時間は掛からなかった
損失が大きくなり、その損失を埋めるために、その後のポジションボリュームが大きくなった
会社を辞めて仕事はこのFX取引しかないという焦りもあったのかもしれない
今まであたりに当たったので相当な(今思えば持つべきでない)自信があったのも事実だ

私のルールはこの当時でも2つ
① イベントの結果ひとつでポジションを動かす必要の無いポジションボリューム
② ファンダメンタルズと顧客ポジションが逆行している時にお客の逆のポジションを取る

の筈だったが、このたった2つのルールも守れなくなっており、そこで取引をしているのはルールを持たないただの一般投資家だった・・・要はズブの素人だ

私はFX業者退職前に学んだこと、手に入れた手法
その全てを自分から切り捨てドツボにハマった
自分を天才と勘違いしている素人程、滑稽なモノは無い
当時の私はまさにそれだった

後から考えれば、それまで出した結果はデモ口座だったし、勝てた理由はそれなりのトレンドがあり、充分信頼に足るデータがあった、それら全てを自分の力だと勘違いしていたのだ

私は1000万円を失った
生涯成績はマイナス1000万円となった

たかだかデモ口座の結果で調子に乗り失敗し
自身で定めたルールも守れず、オマケにカネも失った一般投資家。
(一般投資家といえばまだマシに聞こえるが、要はただのプータローだ)
これをマヌケと言わず誰をマヌケというのか・・・

H氏が「やるなら止めないけど」という態度だったのはこれか・・・

私はFX業者の中にいてデータを丸ごと見る事ができ、毎月シッカリ給料も得て、更にデモ口座だから勝てたのだ!

1000万円負けてから、私は数日間は取引の事は考えず、ひたすら酒を飲みに行った
仕事(取引)の事を全く考えず純粋に毎晩酒を飲んだのは、この時以降は無いと記憶している。

多分、100万か200万円くらい使ったと思う、仕事を辞めてまで挑んだデビュー戦

生涯成績マイナス1000万円の憂さ晴らしは、それなりの金額で拭うしか無かった

 

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ABOUTこの記事をかいた人

1976年生まれ、香港在住。 米国のアルゴリズムトレード格付け機関で分析を学び、30歳で金融機関向けコンサル法人を設立。ディーリングシステムやリスク管理、M&Aを手掛ける。その後、為替を中心としたヘッジファンドを創設し、英国で日本人独立系として初のFXブローカーライセンスを取得。3年半でバイアウト後、世界を旅するトレーダーとなる。現在は香港在住で愛妻・愛犬と暮らしつつ、FXブローカーやヘッジファンドへのコンサルを提供し、幅広い金融人脈を持つ。