年が明け2017年になった
相場の方は、今(トランプ2.0)と同じ様に、前年にトランプ大統領が就任(一期目)してから難しい相場が続いた。
前年末にドル買いに動いた相場だったが、2017年のドルは軟調となった。
相場でそれなりに稼ぎ、生計を立てられる様になり、プロ投資家の仲間入りを果たした私だったが、そこまでの道のりがかなり早かったため、圧倒的に経験が浅くその後も結構四苦八苦した。
プロ投資家の仲間入り後、一番悩んだのは「勝率」だ
私は「経験」が浅かったが故に、4割~8割と大きくブレる勝率に少々恐怖を持ち始めていた
ずっと4割が続いたらどうしよう…
負けや小勝ちの後に、いつか大勝ちが来なかったらどうしよう…
今思えば、経験が浅いが故の悩みである。
諸々検討したが、やはりポジション【位置】の最適化を計るべきだという結論に至った。
その時まで私は、毎朝前日の相場変動と一般投資家のポジション推移を比較し、一定水準逆行しているなら一般投資家の逆にポジションを取っていた
だが、その殆どは成行きでポジションを放り込んでいた。
何とかそれをより有利な位置で持つことはできないか?
と、検討を始めた
ポジション位置を決定するのならテクニカルに頼るしかない。
直感的にそう思った
当然、私は当時からテクニカルで方向を決定する事はしていない。
方向は抜群の切れ味を誇るPublic Biasに完全に依存している。
向かうべき【方向】は決まっている
では、【いつ】そこに向かうのか
【方向】はPublic Biasで
【いつ】をテクニカルに委ねようとした
私は元々FX業者出身の為、システム関連の仕事にも長く関わってもいたので、テクニカルインジケーターなどの詳細については改めて勉強する必要は無かった。
だが、諸々テクニカルを試したが、あまりシックリ来なかった
理由は、テクニカルを使用して検証した結果、通常の相場の動き(大変動ではない)の際は結構機能するのだが、ある程度値が離れる様な大きな動きの際にはガイドが消えてしまう
例えば、移動平均線なら私は一番長いモノで200時間や200日を使うが、それをブレイクして離れてしまうと移動平均線からの情報サポートを受けられなくなる。
では、もっと長いモノを足すか、となるとキリがない
そりゃあ、永遠に何本も足していけば何かには当たるだろうよ…となってしまう
私をプロ投資家にしてくれたのは「大相場」だ
私は「大相場」を取らなければ、鳴かず飛ばずのトレーダーだっかかもしれない
従って、ポジションの最適化で「大相場」に尻込みするようなら、そんなもんは捨て置いた方がいい、と考えていた
そこで私はある事に気が付いた
第5話「Public Bias」で触れているが
大事なのは、相場の変動幅と一般投資家ポジションの変動。
この二つでは無いだろうか…?
と気が付いていた。
そして、大きな相場変動と小さな相場変動は等間隔ではないが交互に来る
多くのテクニカルは脈々と続く相場の動きを集積し、比率で計算される。
従って、前日に大きな変動があっても平均化され均(なら)されるため、「前日との差」や「直近の値動きからの乖離」というモノを拾うのはあまり得意ではない
短い足を見て調整する事も考えたが、逆に動き過ぎて心臓に悪かった。
更に、私の方向決定基準は
・ 前日の値動き
・ 前日の一般投資家のポジションの変動
この二つから決定され、ポジションの手仕舞いは、余程の事が無い限りNYタイム後半、若しくは50pipsの逆行だ
私は(当時)一日の中で方向を変える取引(要はドテン)はしていない
その取引手法の人間が一日の中で相場変動と共に動くテクニカルを使う必要があるだろうか?
そう考えた
頭の中で二つ選択肢が浮かんだ
・ フィボナッチ
・ ピボット
この二つだ
両方試したが、フィボナッチは前日の高値と終値で引くと、前日高値や安値をブレイクした際、また結構なところ迄ガイドが飛んでしまう。
繰り返すが、小さな相場変動の次に大きな相場変動が来た際には、フィボナッチの大きな目途である100%若しくは0%には直ぐに到達してしまう、次の到達点まで結構遠くまで見ないといけなくなる、かといって前日では無く直近安値や高値で引くと、どこの直近高値や安値を採用するかで、そこに裁量の余地が入りテクニカルの特徴である中立性、また客観性が失われてしまう気がした。
ピボットは違った
ピボットは前日(前時間帯)の安値・高値・終値から算出する数値で引かれるラインだ
私が前日の値動きとPublic Biasで方向を決定しているという事は、言い換えると前日の値幅&方向と一般投資家のポジション動向を意味する。
ピボットは前日の値幅と相場の向かっている方向(始値を無視し、高値と安値を見て終値がどちらかに寄っている事を気にしているという事はそういう事だ)を気にしているテクニカルだ、ピボットが別名リアクション・トレンド・システムと言われるのはこのためだ
一般投資家のポジション動向に関してはどのテクニカルも反応ができる訳が無いのでこれは探しようが無い
もしかしたらマッチするか?
私は早速検証をスタートした
やはり大きな動きになると少々物足りなさを感じたため、私なりにピボットの理念に逆らわない様に算出したオリジナルのラインを2本足した
それでも大きな変動を完璧に網羅する事ができなかったので、追加でもう2本足した。
面白いぐらい勝率が上がった。
平均で7割を優に超えた。
例えば、一般投資家の買いが極端に減ったので、私は逆のポジションである買いを選択する。
その時まではデータを確認したら殆ど成行きでポジションを放り込んでいた
ピボットを採用してからは、最低でもピボットポイント(一番中立的なライン)まで引き付けて買いポジションを取った
結果、例えその日に期待程相場が上昇しなかったとしても、マイナスにはならなかった
また、一般投資家の買いが減りはしたが、極端とまでは言えない水準だった場合は、もう一段下のラインであるサポートレベル1まで引き付けてエントリーするなど工夫もした、その結果、例え相場が横ばいで推移してもマイナスにはならないどころかエントリーすらしないで済んだ
例を挙げればキリが無いのでこの辺にしておくが、以下は私の持論だ
テクニカルを使いこなしたければ、方向くらいは自分で決めてやれ
テクニカルは万能ではない、どこかの形、どこかのパターンには必ず合っているのかもしれないが、それをどこなのか見極めるのは我々トレーダーだ
相場の方向を予測する何かを持っている人間が使えば、テクニカルは相当な光を放つ。
私は結構勘違いされるがテクニカル否定派ではない。
こんなに素晴らしい武器であるテクニカルに方向まで決めさせて、自分は努力もしないクセに、当たらなければ「使えない」、「クソだ」と言い放つ輩が嫌いなだけだ、方向さえ決めてあげれば私達のポジション最適化を文句ひとつ言わず引き受けてくれる最高の武器であるテクニカルに、私は心から敬意を払っている。
私は、
自身の方向決定ロジックを固定してから、それに合ったテクニカルを探した
その結果
最高の相性の方向決定ロジックと位置決定ロジック
のカップルをめでたく成立させたのであった。
この時から現在まで私のロジックに大きな変更はない。
勿論、微調整やこのロジックの特性を生かした短期取引
またピンポイントでのポジションの方向転換
日計りにこだわる事無くトレンドが出ている際はポジションを残すオプション
等々、色々なアイデアを導入はした
だが、その全てでこのPublic Biasとオリジナルピボットが土台となり、相場で成績を残し続けている。
この時から先の話はひたすら相場と向き合い
沢山の取引、沢山の勝ったトレード、また沢山の負けトレードの山を築いた
私に足りなかった「経験」を朝から晩まで相場に関わった事でかなり補えたと思っている。
香港は世界でも有数の金融都市だが、この時からの数年間
私よりドル円チャートを見たトレーダーは香港にはいなかったと思う。
なんせ、メインのデスクトップやラップトップの他にタブレット端末を3台購入し、寝室だろうが、風呂だろうが、トイレだろうが、外出先だろうが、常に相場の監視ができる環境を整え
文字通り寝る間も惜しんで平日は殆ど24時間チャートと向き合い、週末は自身のロジック&ストラテジーの構築と検証に時間を使った
その期間の事もいつかお話できたらと思う
そんな私だったが、数年したらどこで聞いたのか色んな人から人伝いに問い合わせも来るようになり
一時、あるヘッジファンドのお手伝いもしたが、人のカネなど面倒になってすぐにやめた
その後、いろんなオファーも頂いたが、やはり面倒なので殆ど断っていた
そんな折、香港でのたった一人の友人であるボブからの紹介で出会ったのが、このFXismだ
当時、私のロジックやツールにはシッカリとした名称は付けていなかった(自分や一部のクライアントに提供していただけだったので必要が無かった)
この色んなかっこいい名称はFXismの皆さんが命名してくれたものだ、それまでは機能=名称だった。
第0話の「再び運命の地シンガポールへ」の2020年3月の冒頭のシーンの後、及川さんとは初めてお会いした
夕方のハッピーアワーでビール片手に話した会話がYouTubeでアップされたときには流石に驚いたのを憶えている 笑
及川さんとは一瞬で打ち解けた
その晩にはバーで「師匠、師匠」「Kちゃん、Kちゃん」と呼び合い
トレード談話を肴に酒を酌み交わす仲になった、相場でしのぎを削る同士仲良くなるのにあまり時間は必要なかった
その交流は今でも続き、私がシンガポールに行ったり及川さんやMr. Tが香港に来たり、皆で日本で会ったりと
会った際は必ず楽しい時間を過ごさせて貰っている。
私にとって師匠はH氏だが、及川さんはアニキの様な存在だ
それから先の事はFXismの動画やSNSを見て頂いた方が正確だと思う
第0話で触れた通り、FXismのプロジェクトは私にとっても大きなチャレンジとなった
人様に自分のやっている事を教えるなど可能なのか?と
私にとっても本当にチャレンジだったが少しづつ慣れた
途中で「勝てない人が勝てるようになった」という報告を聞いた際
(その殆どの方が会った事もない人だったが)
本当に自分の事の様に、いや自分の事以上に、本当に嬉しかった
一人でガッツポーズをした事さえあった
孤独なトレードの世界でこれだけ多くの出会いに恵まれた私は本当に果報者だと思う
数々の出会いと機会に心から感謝したい。
さて、まとめに入らなければならない
前回、第6話「大相場 トランプ1.0」で一般投資家は「早過ぎて遅過ぎる」と述べた
2022年の日本政府・日銀の為替介入での動き
この時は介入期待からドル円を売ったが、150円超で売りポジションを切らされ
その後の介入時の暴落に乗る事は出来なかった
要は、早過ぎたのだ
2016年の米大統領選での動き
ヒラリー氏勝利濃厚との報道を真に受けドル円を買った
その後、トランプ大統領誕生(1期目)の反発で売りに回った
この時は遅過ぎた、その前に売らなければならなかった
大きな相場の動きでは一般投資家は必ず「早過ぎて遅すぎる」動きを反復する。
だが年がら年中、一般投資家の逆をやっていたら忙しく割に合わない
大して儲からないだろう
なぜなら、そうそう相場は大きく動かない
相場が動いていない訳だから費用対効果は良くない筈だ
大きな動きの際に大衆も大きく間違える
これを憶えていてほしい
チャートをご覧頂ければお分かり頂けると思うが横軸が時間軸で動いている以上
いつ買うか売るかのタイミングは重要
というより
実はそれが投機が相場で生き残るための三分の一の要素だ
(特にFXの様なハイレバレッジドトレードの場合は輪をかけて重要になる)
FXでの塩漬けポジションなど許されないからだ!
皆、上がるか下がるかという事にこだわる。
勿論、それも重要な三分の一の要素だ
だが、この遅いのか、早いのか
皆、これを全く気にしていない様に思える。
もしかしたら皆さんも経験があるかもしれないし、見かけた事ぐらいはあるだろう。
急落後に急騰した当日。
「あー、オレ昨日まで買ってたのになー、あのまま持っておけばなー」
この事について、相場は見えていたけどタイミングを計り誤った
という解釈をする方は多いのではないだろうか?
いや、違う。
相場での間違えとは、この事なのだ
2022年の為替介入時や2016年の米大統領選の際の一般投資家の様に間違っている
方向三分の一、タイミング三分の一
すなわち、上下の動きが、左右の時間軸でいつ動くか当てる
それが、相場(FXなどのハイレバレッジドトレード)を征そうと思う者に科せられたルールであると私は思っている。
残りの三分の一だが
間違っていた場合は、仕切り直すか時間軸を想定より広げるしかない
そのためには何が必要か逆算して準備する必要がある。
それをロスカットやマネーマネジメントというのだが
上っ面だけ学んだとて誰もができる様なモノではない
多くの優秀なトレーダーは失敗から学んでいる。
相場で生き残りたければやる事は大きく3つ
① 上下を当てろ
② それがいつかを当てろ
③ 間違っていた時のために保険を掛けておけ
私は①と②は最も間違える人たちから学んだ
③に関しては失敗から学んだ
多くの相場参加者は間違える。
ポーカーをやり始めて 20 分たってもまだ誰がカモかわからない人は、自分がカモなのだ
ウォーレン・バフェット
カモにならないためには
・ ゲームのルールを理解する事
・ 事前に行動の準備をしておく事
・ 相場は勤勉な一部の人間にしか勝てないモノだと理解する事
これが解っていない人は「大衆」だ
私達はその「勤勉な一部の人間」に入らなくてはならない
H氏の様な伝説の相場師でさえ努力している
私は天才にはなれないが、「天才の努力の量」くらいは超えてやろうと思ってやってきた
第6話でジョージ・ソロスの言葉も引用した。
まずは生き残れ、儲けるのはそれからだ
私は、人に鼻で笑われながらも(大概こういう奴は金融機関関連)
一番間違え、一番退場に近い「大衆」と同じ行動をしない様
ひたすら分析をし、そのクセを学んだ
おかげで同じ負け方はそうそうしないまでになった
ハッキリ言って、私は
大衆のやってきた事は、大衆以上に知っている
この様に、相場というゲームのルール、相場で生き残るために必要なプロセス。
その全てを知る機会は世に多くあり、書籍も多く出ている
更には自身の行動を振り返りさえすればシッカリと必要な経験をしている
かつて、デモ口座で驚異的な成績を挙げ
自分の実力を天才級と勘違いし、デビュー戦で1000万円をドブに捨てたマヌケもいた
このマヌケの様に調子に乗って自身の実力を過大評価し
勤勉さを失えば大きな成功は得られない

その様な失敗を忘れないため私はトレードノートを書き始めた、現在までこのノートを書く事を一日も欠かした事は無い。様式は変化したが現在16冊目に達している。
間違った考え、間違った行動。
これを減らせば成功への道に乗り始めると私は考えた
それは、わざわざYouTubeやSNSを見なくても
自分の取引履歴にしっかり記載されているし
経験しているのは自分なので必ず記憶の片隅にはある筈だ
要は、間違えは探す必要は無い、本当は目の前や頭の中にあるのだ
その筈なのに…それに気付かず
自身の考動に対し、なんの反省も、なんの制約も設けないまま
嬉々として次のトレードを仕掛けてしまう、多くの相場参加者の事を
私は「大衆」と呼んでいる
あらためて、ここまでお付き合い頂いたあなたにこの言葉を贈る
大衆の逆を突け