第6話「大相場 トランプ1.0」

完全に調子を取り戻した。
検証口座が500万円を超えたが、そのまま検証口座のみを動かしていた。
相変わらず勝率はブレるが、勝ったり負けたりしていても最終的には口座残高は増えていった。
その日の成績がプラスなら嬉しいのは当たり前だが、マイナスでも大きな勝ちを呼び込む前段階の様な気がしてあまり嫌な気分にもならなかった
マイナスの日は損切をするが
「(大勝ちの日は)明日かな?」と、翌日が来るのが待ち遠しかった。

私は当時SNSを殆どやっておらず、Twitter(現X)アカウントは持っていたが、ニュースメディアのアカウントのみフォローしていたので変なノイズも無く、何一つストレスのない環境で自身のロジックを磨く事にのみ打ち込み、充実した日々を過ごしていた。

また、その期間に一度シンガポールにも行った
H氏とお会いして、Public Biasをお見せした。

「おもしろいね」

以前とは違い、私はFX業者の人間ではなく、伝説の相場師であるH氏から見たら、ヨチヨチ歩きの赤子同然である駆け出しトレーダーだったが、そんな私が造ったPublic Biasを見て興味を持ってくれたのが何だか嬉しかった
(この日から現在に至るまで必ず毎日、H氏には私がデータを取得して直にタイプしているPublic Biasをお送りしている)

「この短期間でよく…」

と、お褒めの言葉を頂いたが、ご存じの通り私は調子に乗りやすい人間なので、いい思い出に浸るのはこの辺にしておく。

H氏には現在に至るまで色んな事を教わった、私の性格がねじ曲がっているのかもしれないが、こと相場の事に関しては殆どH氏以外から教えてもらいたいとも思った事が無い気がする。

因みにH氏は私を弟子だと思っているかは不明だ
私が勝手に師事している。

さて、いくら師匠が凄い人でも、相場は自分で取るしかない。
香港に戻り相場と対峙する日々が続いていた
100万円からスタートした元検証用口座は500万円に達したのは既に述べたが、その後も懐刀のPublic Biasの切れ味は衰える事無く、数か月後には1800万円程になっていた。


そして遂に

いよいよ、初めて挑む大相場となった。

2016年11月の米大統領選だ
この大統領選挙は共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン氏の対決となった。
下馬評はヒラリー・クリントン候補有利という事で、当時は(も?)過激な政策を打ち出していたトランプ候補(当時)が敗れればリスクオン、という事で、ドル円は10月後半から上げ始め、10月頭には101.10円台だったが10月後半に一時105.50円台まで買われた
(約4.35%の上昇なので、現在だと7~8円上げた計算になる)

少々この2016年10月から11月のドル円の動きを振り返ろうと思う。

この時の動きは今でも忘れない。

一般投資家はヒラリー氏有利という報道を聞くや

既に高い所にあるドル円を買ってきたのだ

この時には、私はファンダメンタルズ云々では無く、一般投資家のポジションが偏れば逆のポジションをとるというルールに基づいて取引をしていた。
更に、デビュー戦での「全損惨敗」の手痛い経験から、自身の相場観やアナリスト的な分析などちゃんと「クソ」だと思っていたので非常に落ち着いていた。

そう、私はドル円売りポジションを積み増していた。
だが…なかなかドル円は下がらなかった。

10月中旬以降、日に日にドル円は安値も高値も切り上げ動いていたが、ある日突然一般投資家が買ってきた。
いつもの「根拠も無く高いから売る」ではない
「根拠はヒラリー氏勝利だからドルを買う」という、今回は根拠付きだった
だが、私は既に「ファンダメンタルズ無視スキル」を習得していたので、一般投資家が買ってきた際に売りで仕掛けていった

だが、ドル円は下がらない。
それでも、買いを手放さない一般投資家。
一般投資家が当たっていたが、この時の私はショートポジションを手放さなかった
どう考えても、一般投資家は「ヒラリー氏有利」のニュースに飛び付き、いつもなら根拠も無いのに高いから売る人達が売ってこないのだ、これは何か大きな動きになると感じていた

全く不安でなかったと言えば嘘になるが、実際のところは、不安と期待が入り乱れ、
「どんなことになるのだろう」と高揚感すら感じたほどだった

その予想は幸運にも大当たりした。

10月28日金曜日にドル円が一気に崩れ始めた

ヒラリー・クリントン候補の私用メール云々の報道で70pipsほど急落し、その後戻る様に見えたが戻りは弱く、月を跨いでも軟調傾向となり、結局11月3日木曜日までの一週間で102.50円台まで下落した。
この下落時に私は浅い所で売ったポジションを全て利益確定している。

ところが翌週明けの11月7日月曜日
寄り付きから上窓を開けた。
10月28日のヒラリー氏の私用メール云々の件について、その週末の11月5日と6日に調査の結果、問題無しとの報道を受けてドル円は高値で寄り付いた。
私は全てのポジションを手仕舞った。
104円台で売っていたポジションは前週の下落時に利食いを行っていて、105円台などの高い所での売りポジションだけが残っていたので、マイナスにはならなかったが大きく利が乗っていたポジションだけに惜しい事をしたと当時は思った。

それからは、ヒラリー氏の当選が確実かの様に連日報道があり、ただ上げ続けるドル円。

一般投資家は懲りずに、またドル円を買ってきたのだった…

私は、ここまで高値圏(当時)を堂々と買ってくる一般投資家の雄姿を今まで見た事が無い。
ちょっと買うなら解る、だがこの時は「シッカリ」買ってきた
明確に「ドル円が上がる」という意志が目で見えるかのように買ってきたのだ、時間の経過と共にドル円も上がり一般投資家の買いポジションも増加した。

私は決めた。

元検証口座の約2000万円、そして放置してあった900万円のうち500万円を元検証口座に移動し、合計2500万円でドル円の売りを仕掛けた。

根拠は「一般投資家が高い所を買っている」ただそれだけだ

ここまできたら米国の大統領選挙の結果など私は全く気にしなかった。
「ヒラリー氏が勝ったところで円安になるかなんてわからんよ」
と周りに言っていたのを憶えている(トランプ氏が勝つとはさすがに解らなかった)

時間の経過と共に含み損が増える私の口座
同時にポジションボリュームも膨らんでいった

11月9日水曜日
いよいよ選挙結果が判明してくる。

東京タイムだった

トランプ氏当選確実。

ドル円は105.80円台から101.10円台まで一瞬で大暴落となった。

その後、余りの動きの速さに一般投資家のポジション動向を待っている余裕も無く、ドル円が下げ止まったのを確認し私は全ポジションを手仕舞った。(2022年や2023年の日本政府・日銀の為替介入でもその瞬間に下げるのは5円程度だ、この105円台での約5円の急落のインパクトは想像を絶する下げとなった)

口座残高は4300万円になっていた。


だが、話はこれで終わらない。


その後、ドル円は反発を始めた
この日の夕方には一般投資家の売りポジションがどんどん増えていき

翌朝のPublic Biasでは、なんと売りポジションの比率が70%を超えていた…

私はまたアニメや映画の様な光景を目の当たりにした

一般投資家はヒラリー氏が勝つと見込んでドル円を買っていた
ところがトランプ氏が勝利し一時ドル円は下落した。
そこで一般投資家の口座は相当なダメージを喰らった筈だ

それでも、尚

おそらく…
ヒラリー氏=買い
トランプ氏=売り
というロジックは死んでいなかったのだ…

損失を取り戻すべく、このロジックに従い売ってきているのだろう
なんと健気な事か…

正直、私は一般投資家が気の毒に思いながらも
「お前だって1000万円簡単にくれてやったじゃないか」
と自分に言い聞かせ
元本番口座の残高400万円も元検証口座に移し、4700万円でドル円の買いを仕掛けた

ドル円は12月15日に118.60円台で天井を打つまで、11月3日の101.10円台から実に17.5円(17.3%)の値幅を25営業日で達成した
(現在のレートだと25~26円の上昇になる)

この間、私は買っては利食い、買っては利食いと非常に楽な取引で利益を確保した。

もっとこの辺は感動的に書きたいのだが、大きなトレンドに乗って取引する時は大概、「なんでこんなに簡単に利益が取れるんだ?」と思えるくらい感情が揺るがない。

いつも後から気が付くのだが、この時も

その期間中、一般投資家のポジションが買いに偏った事がただの一度も無かったためだ


この時の教訓から、大きな相場の流れにシンクロする事が重要なのを忘れない様に、私のメインモニター下の一番目が行き易い所には、必ずこの手の内容のメモが貼ってある。

 

ドル円が天井を取った12月15日には私の口座残高は1億8000万円を突破していた。

私は生意気にも半年ほどで億トレーダーの仲間入りを果たした



さて、ここでおさらいをしておきたい

私は、第1話の「相場の大変動に翻弄される一般投資家」で2022年の日本政府・日銀の為替介入時の値動き、そして、その際の一般投資家の行動について書かせて頂いた。

この第6話もそうだが、相場の大変動の際の一般投資家の行動には、ある共通点がある。

「早過ぎるし遅すぎる」

という行動パターンが見えてこないだろうか?
この話の詳細は次回で触れたい

私は相場を誰よりも見てきたなどとは口が裂けても言えない。
相場が上手いとも思わないし、決して上手くないのであろうと思う。

相場を知り、相場が本当に上手いのはH氏の様なごく限られた人だと断言できる。

私は何年か前にH氏に
「Hさんは天才なので」
と言ったことがある

「おいおいKさん、俺は天才じゃないよ、天才はオレほど努力しない」

と言われた、衝撃だった。
我々の様な人間から見たら天才としか言えない結果を残す方でもこうなのだ

私にはH氏の様な才能や腕があった訳では無い。
そんな私だが、この厳しく、そして無情な相場の世界でなんとか生き残っている

私は、自身のまだ短いトレーダー人生の期間中に限れば

「一般投資家の行動を誰よりも見てきた」と思っている

そう、相場参加者の中で最も間違えが多い人達の監視を、最もしてきたと自負している、もしかしたら、もっと見ている人がいるかもしれない、それでもいい勝負にはなると思う。

相場に挑み、諦めて相場を辞めていく人達は多い

それはそうだ、結果が伴わなければ直接カネが減る世界で投資活動を継続する事は困難だ

H氏の様な伝説の相場師でも努力をしている

私のやった努力は「一般投資家の売買動向の監視と分析」で、人によっては鼻で笑われる(事実、何度も笑われた事がある)努力を寝る間を惜しんでやってきた

私と諦めて相場を辞めていく人達早過ぎるし遅すぎる一般投資家との違いは、この努力以外に今のところ思い当たらない

この物語を読んで下さっている皆様に

相場に関して「これなら」誰にも負けない。
というモノを見つけて欲しい。

そういう思いでこの物語の執筆を始めた。

きっと、手っ取り早い勝ち方を知りたい人も多いと思うし、その気持ちは解らなくもない

だが、そんなうまい話は無いし、相場(特に投機)に関しては殆どの人間が生き残れない

「まずは生き残れ、儲けるのはそれからだ」

これは著名な投資家であるジョージ・ソロスの言葉だ

おそらく、この言葉は熟練のトレーダーに向けた言葉ではない

だが、非常に残念なことに

素人程この言葉の大切さを理解できず

相場経験が長くなるに連れてこの言葉の大切さが理解できてくる

きっとこの辺にヒントがあるのだろう…

次回の最終回「大衆の逆を突け」では、相場で生き残るための私なりの思考法についてお話させて頂き、この物語を締め括ろうと思っている

 

最終回「大衆の逆を突け」に続く(近日公開)

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ABOUTこの記事をかいた人

1976年生まれ、香港在住。 米国のアルゴリズムトレード格付け機関で分析を学び、30歳で金融機関向けコンサル法人を設立。ディーリングシステムやリスク管理、M&Aを手掛ける。その後、為替を中心としたヘッジファンドを創設し、英国で日本人独立系として初のFXブローカーライセンスを取得。3年半でバイアウト後、世界を旅するトレーダーとなる。現在は香港在住で愛妻・愛犬と暮らしつつ、FXブローカーやヘッジファンドへのコンサルを提供し、幅広い金融人脈を持つ。